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第一渡辺文録

越後海府浦をあるいています 別館 http://watanabenumber3.blog.shinobi.jp/もどうぞ

   

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海府の浦を繋ぐ道~深浦・恵比寿浦~ その十三 考察

海府浦の中で、最も景勝に優れた板貝浜より笹川浜までの区間には道(陸伝い)がありませんでした。江戸時代中頃より景勝地と呼ばれ始め、昭和2年に改めて国名勝天然記念物として指定された「笹川流」。それまでの道は、自然地形を生かした山越え道である板貝峠を越えるものでした。

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大正5年発行の地形図には、まだ海沿いの道も羽越線の存在も描かれてはいません。(測地は明治44年)

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昭和11年発行の地形図上では、海沿いの道と大正13年開通鉄路(羽越線)が描かれています。
大正初期(2~6年)に、はじめて海沿いの道が施された記録が残されています。

112b5e56.jpg
これが現在の姿です。(カシミール3Dにて作図)
大正時代の道が、ほぼ現在も同じ場所で通されていることがわかります。

そもそも陸路を必要としなかったことは、すでにある程度発達した海路の存在があったこと、海府浦浜通り自体が主要街道ではなく(街道としては蒲萄峠経由が主流であった)、人の移動もそれほど多いものではなく、人ひとりが村々を渡って通過できればよかったものと考えられます。
「笹川流」自体が海路の存在と大きく関わっています。本来の「笹川流」とは、舟上から陸側を見た時に、花崗岩の断層崖が織りなす奇岩とその合間を流れる潮流から、笹川村の名を取って付けられたものです。つまり海路があって笹川流の存在があるのです。

大正13年の羽越線全通、そのすぐ後に国によって名勝天然記念物として、また日本百景として認定された笹川流。その景勝地を陸から愛でるためにこの海沿いの道が施されたわけではなさそうです。

大正期に板貝~笹川までの海沿いの道として十本もの隧道が開鑿されていきましたが、当時の資料として残されているカタガリ松隧道の姿がひとつのヒントとなりえるかもしれません。鉱山で用いられる間歩堀りの坑道入口そのものの姿となっていることす。実際に蒲萄山塊には、多くの鉱物資源が含まれており、蒲萄鉱山をはじめとして多数の鉱山がありました。金や銅、亜鉛などを産出していたようで、明治末期~大正期にかけての資源開発が多少なりとも関わっていたのではないか、という推測ができます。
道としても坑道の大きさ(幅1m,高さ1.7m程度)で十分であり、人が通り抜けられればよい、というものだったのでしょう。海府には明治の隧道も多数ありますが、この区間の隧道よりももっと大きなものでした。

その人道隧道は、昭和44年の車道化までほとんどそのままの状態で改良されることなく残されることとなります。まだ自動車の存在が無かった頃、物流に関しては鉄道の存在が大きかったものと考えられます。また、南北を通す道路に関しても、蒲萄山塊の東側を並行する現在の国道7号の存在があったため、海府浜通りを改良する必要性は無かったのでしょう。結果として、つい最近まで「道路」の文化が無かったことになります。

新潟県による「海岸無雪道路」計画によって車道化された道は、その大正期の道をそのまま拡幅したものでした。その後すぐに一般国道345号として国道昇格しますが、ほとんどが「大正期の道を拡幅した道路をコンクリートやアスファルトによって近代化した状態」で現在に至っています。

元々は別の理由で施された道。車道化という近代化もやや遅れ、そのままの状態が現在の国道となっても多くの形跡を残している板貝浜~笹川浜までの道。「笹川流」とは別の歴史から成り立っているものなのでしょう。もうすこし当時の時代背景等を精査して深く掘り下げる必要がありそうです。

海府浦一帯の道は、繋がってはいるもののそれそれ別の歴史を持っています。
元々は人の近づけなかった道。景勝地の裏側には、もっと多くの背景が隠されているのでしょうか。 

(了)



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